Polar Night (極夜)

私達がインペリアルスタウトを作る意味を考えたときにあるべき姿は黒い外観や香ばしさの中に雑味を隠さないことでした。これだけハイアルコールのビールを醸造するからには酵母もそれなりのダメージやストレスを負ってしまいます。死滅酵母が多すぎたり、発酵が終了後のビール中に酵母が沈んだまま放置してしまったりすると酵母由来のオフフレーバーがビールに染みついてしまいます。醸造士は酵母の｢Dying Message｣の如き最後の言葉を味覚や嗅覚から読み取り、どれほど過酷な発酵であったのかを推し量れます。そういった悲劇が起こらないようにするのが私達の腕の見せ所であると考えると同時に、自分達自身もクリーンなインペリアルスタウトを飲みたいという気持ちがありました。ストレス耐性の強い酵母の選択と私達のハイアルコールビール醸造のノウハウが掛け合わさり、酵母は気持ちよく活動を終えられたようです。最低限に抑えたカラメルモルト、チョコレートモルト、そしてローステッドバーレイの香ばしい穀物のフレーバーは深みがありながらもキリっと澄んだ夜の空気の様にシャープで、とにかく抵抗なく喉を通り抜けていく。タバコだとか葉巻だとか、そんな珍しいフレーバーを持つホップもいるもんで、そんなホップをくゆらせたりしています。もしかしたらこのインペリアルスタウトは多くの種類を飲んできた人にはとっては綺麗すぎて物足りないかもしれません。逆にこれまでのものが重すぎて抵抗が強すぎて選択肢から自然と外れていた人にとっては刺さるインペリアルスタウトになったのでは。問題はそういった人に手に取ってもらえるかどうかですが、冒険することを厭わずに選んでくれた人達に報いることができたら幸いです。グラスに閉じ込めた長い夜をじっくりゆっくりお楽しみください。 Show Less